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1.はじめに

2.現状調査 

3.提案

4.おわりに

5.参考文献

6.謝辞

2.1 受け入れ側の現状調査

 

2.1.1 サイエンスツアーバスについて

サイエンスツアーは科学技術の啓発を目的としており, 研究機関を巡る循環バスが土日・祝日のみ運行している.1日1便スタッフガイド同行コースもある.料金は大人500円,子供250円で一日乗り放題で,夏にはTXとの往復券セットの割安切符が販売されている.

・ルートや運行間隔の現状
サイエンスツアーバスで見学することができる施設はつくばエキスポセンター,サイエンススクエアつくば,国土地理院,つくば植物園,地質標本館,筑波宇宙センター,筑波大学ギャラリー,食と農の科学館の8施設である.(表1参照)サイエンスツアーバスには北回りと南回りの2ルートがあり,八の字を描くように交互に運行されている.(図4,表2参照)上記の8施設と同様に見学可能で,付近にあるCYBERDYNEや高エネルギー加速器研究機構はこのルートに含まれていない.


表1 サイエンスツアーの見学施設

図4 現状のバスルート地図

 

表2 現状のバスルート

 

 

北回り

南回り

回る施設

所要時間

一周35分

一周55分
(食と農の科学館・洞峰公園を含まないコースは26分)

表3は,各研究施設の見学所要時間とサイエンスツアーバスの平均運行間隔を表している.この表を見ると,見学所要時間とバスの平均運行間隔はあまり一致していないことがわかる.食と農の科学館に関しては,バスの平均運行間隔が見学所要時間の2倍以上となってしまい,訪れた人は見学し終わってから1時間以上もバスを待たされてしまうことになる.



表3 見学所要時間とバス平均運行間隔

 

研究施設名

見学所要時間(分)

バス平均運行間隔(分)

国土地理院

60

 

43.7

筑波大学ギャラリー

30

つくば植物園

60~120

つくばエキスポセンター

60~120

食と農の科学館

60

133.3

地質標本館

60~90

 

43.4

サイエンススクエアつくば

60

筑波宇宙センター

30~75

 

 

2.1.2 ヒアリング調査

私たちはつくばの観光の現状や研究施設の見学の現状を把握するために,以下の2団体にヒアリング調査を行った.詳細は以下の通りである.

<社団法人つくば観光コンベンション協会>
日時:平成22年4月23日(金) 13:00~
場所:つくばインフォメーションセンター
協力:本間亮太 様

○つくばエクスプレス開通について
 つくばエクスプレス(TX)が開通して今年5周年を迎えた.観光客数は開通後3年目までは右肩上がりだったが,4年目で横ばいになり,以下減少傾向が見られる.

○筑波山について
・平成21年度の観光客数は243万人であり,例年に比べると少ない.毎年だいたい250万人前後の観光客がいる.
・筑波山が混む時期は5月,11月,年末年始,2月,3月である.人気が高まる理由は,それぞれ5月はゴールデンウィーク,11月は紅葉のピーク,年末年始は初詣・初日の出,2,3月は梅祭りなどのイベント,シーズンがあるからである.特に年末年始・ゴールデンウィークは筑波山近辺で大渋滞が起こり,筑波山 へのアクセスや駐車場のキャパシティに限界がみられている.この問題を解決するべく,バス専用道路が検討されている.
・筑波山の観光客の男女比は1:1くらいで,あまり男女差はみられない.年齢層は定年後の人が多い.観光客数を平日と休日で比較すると,圧倒的に休日の方が多くなっている.自家用車で訪れる人が多く,土日は宿泊する人もいるがたいていは日帰りである.

○外国人の受け入れについて
・つくば市観光のパンフレットは日本語・英語の2ヶ国語に対応しているが,英語のパンフレットにはあまり需要がない.
・茨城空港の開通に伴い,韓国語・中国語のパンフレットの作成も検討している.
・茨城空港とつくばを往復するバスの運行が始まっている.(1日2往復)
・つくばを観光目的で訪れる外国人は少なく,その多くが学会等の目的で訪れている.つくばを訪れた後は,東京に宿泊する人が多い.
・外国人観光客は中国人が多い.

○サイエンスツアーについて
・普段は土日祝日のみの運行だが,夏休みは毎日運行されている.夏休みのサイエンスツアー利用者が1年の中で最も多い.

○その他
・筑波山ぐるっと協議会という会があり,4市で連携し年1回のツアーを行っている.1回の参加者数はおよそ2,30人である.
・つくばの名産品を販売している場所はつくば駅,筑波山くらいしかない.また「つくばといったらこれ」というものがない.
・地元・行政・団体の連携が不足している.
・人気のある観光地に比べて,地域でまとまってひとつのことをする,という雰囲気がない.

 

<財団法人茨城県科学技術振興財団つくばサイエンスツアーオフィス>
日時:平成22年4月30日(金)13:00~
平成22年6月11日(金)14:00~
場所:つくば国際会議場
協力:マネージャー 馬場雅則 様  調査役 須藤慎一 様

○サイエンスツアーの利用者について
・サイエンスツアーの利用者が少ない.オフィスとしてはもっと増やしたいと考えている.
・利用者が増えないとバスが増やせないが,バスを増やさないと利便性が上がらないため利用者が増えないというジレンマがある.
・サイエンスツアーのリピーターが少ない.
・TXからサイエンスツアーバスに乗り換えて利用する人が多い.

○PRについて
・サイエンスツアーのPRは現在,バス内やインフォメーションセンター,iias,クレオスクエア,オークラホテルなどで行われているが,十分とはいえない.

○サイエンスツアーバスのガイド同行コースについて
・ガイド同行コースを始めたのは去年の夏からだ.夏休みはサイエンスツアーバスが毎日運行されているが,ガイド同行コースがあるのは土日祝日のみである.
・ガイド同行コースは現在1コースしかない.コースを増やしたいが,人手が足りないため増やすことができない.そこで学生ボランティアに協力を依頼し,コースを増やすことを検討している.

 


2.1.3 現地調査

サイエンスツアーの実態調査として,私たちはつくば市の研究施設を2通りの方法で実際に回ってみた.そこで分かった問題点を以下に挙げる.

○サイエンスツアーバス利用
   日時:平成22年4月29日(木)9:30~
・ダイヤの運行間隔の悪さから,見学時間が十分に取れなかったり,また逆に待ち時間が発生してしまったりした.

○自家用車利用
   日時:平成22年5月1日(日) 11:00~
・車で来訪した人のための情報の一括提供の場がない.
・研究施設の前に警備員がいるため,施設に入りにくい雰囲気がある.
・サイエンスツアーのガイドブックが個人向けではなく団体向けに作られているため,個人で訪れた人が手に入れにくい.
・施設間の連携が希薄である.

 

2.1.4 受け入れ側の問題点

以上をふまえ、受け入れ側の問題点をまとめると以下のようになる.
・サイエンスツアーバスは本数が少ないため,利便性に欠ける.
・来訪者に対して十分な情報提供ができていない.
・研究施設間やツアーオフィスに連携不足がみられる.